さおだけ屋はなぜ潰れないのか?
サマリー&レビュー
内容
企業の利益(=売上-費用)の上げ方について記載されており、そのポイントは下記である。
- 利益を増やすには、「売上を増やす」か「費用を減らす」しかない
- 売上の増やし方(回転率を高めるか、連結決済する)
- 費用の減らし方(在庫を減らすか、利息を減らす)
本書では、各ポイントについて「企業における会計」の観点から説明した後、「個人における会計」への会計知識の活かし方が説明されている。
対象者
- 会計をはじめて勉強する人
- 堅い(とっつきにくい)会計の本で脱落した経験のある人
難易度
- 読者に興味を持ってもらえるように、身近で不思議な事例(会計)がいくつか取り上げられており、推理小説を読んでいるような楽しさがある
- 超初歩的な会計用語のみが使用されている。都度都度丁寧に説明されているため、理解に困ることはまずない
評価
★★★★☆(4/5)
- 会計への導入書としては非常に良書であると思われる
- 企業の会計知識を、個人の日常生活に応用する説明がいくつか出てくるが、個人的には納得のいかないものが多かった
利益
企業は使命は、利益を上げることであり、「ゴーイング・コンサーン(「企業は継続する」という大前提のことで、継続のためには利益が必要)」という前提がある。 \(利益 = 売上 - 費用\) 「利益を増やす」には、「売上を増やす」か「費用を減らす」しかない。
売上の増やし方
売り上げを増やす方法には、大きく分けて2通りの方法が存在する。「回転率を高める」と「連結決算する」である。
回転率を高める
売り上げと回転率(1日でさばける客の数)の関係は下記式で表され、回転率を高めることで売り上げは上がる。
\[売上 = 単価 \times 数{\rm(回転率)}\]薄利多売な商売にとって回転率は命。ただし、いくら回転率が高くなったとしても、リピータを作ることができなければ(「安さ」以外の差別化ポイントを見いだせなければ)、いずれ回転数(客数)は落ちていくので注意が必要。 単価を上げることが売上向上の最も容易な手段であるが、等価交換の原則(同じくらいの価値があるモノ同士を交換する)を無視すると、商売はうまくいかなくなる。また、単価が高いと売り上げや利益計画がブレやすくなる。
チャンスゲインを活かす
チャンスゲイン(売り上げ機会の獲得)を活かすことで売り上げを高める。これは、回転率を高めることで売り上げを高めていることに等しい。商売の基本はチャンスゲインを正しく活かす(お客さんが欲しいと思ったモノを欲しいと思ったときに提供する)ことである。 会計上、チャンスロス(機会損失)は、実際に得られなかったものをゼロとするのではなく、マイナスとして評価する。チャンスロスを回避するために、予測される最大限の売り上げのプラス10%くらいは仕入れておく必要がある。「在庫を減らす」でも触れるが、在庫は「多くてもダメだが、ないと困る」ものであり、量の微妙な調整が重量となる。
連結決算する
副業で売り上げを高める。本業だけで儲ける必要はなく、副業など他のところで利益を上げることができれば商売は成り立つ。 副業は、本業との「つながり」を意識する。本業とつながりのある副業にすることで「ローリスク・ハイリターン(予算内・得意分野)」な投資となる。
費用の減らし方
費用を減らす方法には、大きく分けて2通りの方法が存在する。「在庫を減らす」と「利息を減らす」である。
在庫を減らす
在庫は「悪」である。在庫は抱えているだけで様々なコスト(在庫コスト)がかかる。会計的に考えるなら、使わないものはさっさと捨ててしまった方がはるかに合理的で効率が良い。大量に仕入れすぎたことで潰れる企業も多い。 一般家庭でも同じで、使われないモノにも「在庫コスト」はかかっており、損しないためにも在庫(使われないモノ)は減らした方が良い。
在庫を減らす具体的な方法
かんばん方式
必要なものを、必要なときに、必要な分だけ用意する。
サプライチェーン・マネジメント
モノの製造元から、卸売業や流通業、そして小売業にいたるまで、それぞれが協力し合って在庫をなくしていこうという考え方。
利息を減らす
売掛金等を早く回収することで、無利息でお金を借りたことに匹敵する効果を得る。売り上げと同時に代金をもらうことのできる業種は、個人向けの小売店・サービス業ぐらいである。これらの業種は「現金商売」と呼ばれ、資金ショート(お金がなくて仕入先への支払い期限までに代金が支払えない)の危険性が少ない業種である。資金ショートの回避策は「支払いは遅く、回収は早く」に尽きる。
資金繰り関連ワード
手形
支払い期限を引き延ばすモノ。
掛
売り上げてから代金が入るまでの状態。
会計の仕事
会計は、「どうすれば物事を的確にとらえられるか」にチャレンジする学問である。数字の背後には「意味」が存在する。
分析の基本(決算書の分析を含む)
- 1単位あたりいくらか
- 去年と比較してどうか
会計を使って分析する際、1円単位の計算は無意味であり、万円単位の大局を掴むことが重要である。
監査の仕事
大事な一部を調べることで、「まぁ全体としても大丈夫だろう」と太鼓判を押すのが監査の仕事。これをリスクアプローチ(不正や粉飾がありそうなところに重点的に取り組む)という。