最強の早期リタイア術
サマリー&レビュー
内容
一般人の最も達成しやすい早期リタイア術について記載されており、その戦略は下記2ステップからなる。
- [リタイア前] 支出を抑え、財産を築く(蓄財戦略)
- ミニマリストとして生き、生活費を削る。貯蓄率を高めるように意識する
- [リタイア後] 4%ルールに則った無難な資産運用(資産運用戦略)
- インデックスファンドと債券に投資し、ポートフォリオの4%の資金で生活費を賄う
著者の人生をたどりつつ、上記2点の具体的な蓄財戦略と資産運用戦略が記述されている。
対象者
- 起業や投資に抵抗は感じているが、早期にリタイアしたいと考えている人
- FIRE に興味がある人
- 節約が得意で、貯金したお金を銀行で遊ばせている人
難易度
- 前提知識などは必要なく、平易な言葉が用いられている
- 著者の人生をたどりつつ、小説のように読み進められるため、最後まで読みやすい(知識の羅列になっていない)
評価
★★★★☆(4/5)
- 「FIREとは何か」を学べただけでも読む価値があった
- 長期投資(資産運用)の知識を学べて良かった
- 小説風で読みやすかったが、結果としてポイントがわかりづらかったので星を一つ減点
オプティマイザーとは
オプティマイザーとは、支出を抑えて財産を築く人のことを指す。蓄財した資産を無難に運用することで早期リタイアする。
ミリオネアの分類
ミリオネアは、パーソルファイナンス(収入、投資、貯蓄)の観点から3つに分類される。自分自身の個性を知り、得意不得意を理解した上で自分に最もあったやり方を選ぶと良い。
項目 | 起業家 | 投資家 | オプティマイザー |
---|---|---|---|
特徴 | 収入が非常に高い | 投資が非常に優秀 | 貯蓄が非常に優秀 |
概要 | 事業で稼ぐ | 投資で増やす | 支出を抑える |
例 | イーロン・マスク | ウォーレン・バフェット | クリスティー・シェン |
再現性 | 低い | 低い | 高い |
オプティマイザーのFIRE戦略
特に筆者は「フリーダムマインド(「お金ではなく、自由こそが最も重要だ」という考え方)」思考であり、リタイア後には夢だった仕事(物書き)をしつつ世界旅行を続けている。
蓄財戦略
“ミニマリスト“として生きることで出費を抑える。
節約
節約術
「基礎的な支出が低く、想定外の費用もなく、幸福感をもたらす自分へのご褒美が多い予算」を目指す。「多くのモノを所有し過ぎており、基礎的な支出が高く、想定外の費用もあるため永続的に不幸な典型的消費者の予算」から脱する。すべての支出が平等に幸福感を与えないように、すべての節約も平等ではない。痛みを感じないところから削る。
- 基礎的支出を削る(あなたを幸せにしない支出)
- 基礎的支出を削る(痛みを伴う支出、ただし次第に慣れる)
- 高額なものを減らす
- 自分へご褒美する
幸福の仕組み
人の快楽は「脳に放出されたドーパミンの期待値からの差分」によって決まる。つまり、同じことをし続けると人は幸せを感じなくなってしまう(ヘドニック・トレッドミル現象)。モノであろうと経験であろうと、人生に何か新しい風を吹き込んでくれるとき、その支出は幸福感を高めてくれる。
仕事と情熱の優先度
仕事 > 情熱
まずお金を優先し、それから夢を追いかける。「心から好きなことをすれば、お金が後からついてくる」と期待するのは危険。経済的不安がない状態で好きなことを追いかけた方が、創造力も発揮しやすい。仕事は”コスパ”重視で選択する。
欠乏マインドと権利マインド
欠乏マインドは「お金が尊いものである」ことを教えてくれるが、「最終的な目標がない」ことが問題。不満を言わず、怒りを抑え、痛みを受け入れ、耐え抜くことで人格が磨かれる。
欠乏マインド
- 欠乏している物事に集中し、それ以外の物事を無視するような状態
権利マインド
- 一部の人に与えられる特権を、誰もが平等に与えられている権利と履き違えた状態
お金と時間の格言
大切なのは「お金」ではなく「時間」。できる限り充実した人生を送るために、いかに時間を賢く使うかということ。
貧しい人はモノを買う。中産階級の人は家を買う。お金持ちは投資資産を買う。
中低所得者は自分たちの富を「足す」ことばかり考えている。教育を受け、より高級の仕事に就くといったこと。高所得者は自分たちの富を「大きくする」ことを考えている。
資産運用戦略
インデックスファンドと債券に投資し、ポートフォリオの4%の資金で生活費を賄う(4%ルール)。株式市場が上昇したら、利回りシールドとキャピタルゲインを使って今年の支出を賄う。一方、株式市場が下落したら、利回りシールドと現金クッションを活用することで資産の売却を回避する。
リタイアに必要な理論・資産・期間
リタイア後は4%ルールに則った資産運用を行う。
リタイヤに必要な理論
4%ルール
「ポートフォリオの4%の資金で1年間の生活費を賄えれば、貯蓄が30年以上持続する可能性は95%」
\[資産 \times {\rm SWR} = 生活費\]トリニティ大学の退職プランと経済理論の研究結果である。論文中では「安全引き出し率(SWR(Safe Withdrawal Rate))は4%である」と結論付けられている。
リタイアに必要な資産
生活費を安全引き出し率で除することで、リタイアに必要な資産が求められる。
\[資産 = \frac{生活費}{{\rm SWR}}\]例えば、「年間400万円で生活するために必要な資産は1億円」と求められる。
リタイアに必要な期間
「資産」と「生活費」を数式で表現することで、リタイアに必要な期間が算出できる。
資産
複利運用した資産は、下記より求められる。
\[資産 = I \times S \left[ \frac{\left( 1 + r \right)^N - 1}{r} \right]\]ここで、収入(I)、貯蓄率(S)、年間リターン(r)、積立期間(N)である。
生活費
貯蓄以外が生活費として消費されているため、下記のように求められる。
\[生活費 = I \times \left( 1 - S \right)\]期間の算出
これらを代入するし、Nについて解くことで、リタイアに必要な期間が算出できる。
\[\begin{align} I \times S \left[ \frac{\left( 1 + r \right)^N - 1}{r} \right] &= \frac{I \times \left( 1 - S \right)}{{\rm SWR}} \\\\ \frac{\left( 1 + r \right)^N - 1}{r} &= \frac{1 - S}{{\rm SWR} \times S} \\\\ \left( 1 + r \right)^N &= \frac{1 - S}{{\rm SWR} \times S} \times r + 1 \\\\ N \times \log \left( 1 + r \right) &= \log \left[ \frac{1 - S}{{\rm SWR} \times S} \times r + 1 \right] \\\\ N &= \frac{\log \left[ \frac{1 - S}{{\rm SWR} \times S} \times r + 1 \right]}{\log \left( 1 + r \right)} \end{align}\]ここで求められた「リタイアに必要な期間」は、「積立期間(労働期間)と同じ生活費でリタイア後も生活を続ける場合」という前提付きであることに注意する。 その前提において、リタイアまでの期間は年収に左右されず、貯蓄率に強く左右される。
貯蓄率とリタイアに必要な期間の関係
右軸には、リタイア時の資産残高(*手取り600万円の場合)も示した。
ちなみに、中国人の平均貯蓄率は38%、米国人は3.9%、日本人は2.8%である。つまり、ほとんどの米国人と日本人にとって、オプティマイザー的早期リタイアは難しい。
リスクと防衛手段
リタイア後に資金が底をつく5%のひとりになるリスクが最も高いのは、下落相場で資産を売却してしまったときである。下落相場時の資産の売却を逃れるために、現金クッションと利回りシールとを活用する。
シークエンス・オブ・リターン・リスク
4%ルールで資金が底をつくかどうかは運に左右されている。
- [好景気の直前にリタイア] 10年間の上昇相場後、5年間の下落相場。資産を増加させた状態からのスタートとなり、その後の生活が安定する
- [不景気の直前にリタイア] 5年間の下落相場後、10年間の上昇相場。資産を減少させた状態からのスタートとなり、その後の生活が不安定になる
リターンを得る順番(シークエンス)に依存したリスクであるため、「シークエンス・オブ・リターン・リスク」と呼ばれている
現金クッションと利回りシールド
現金クッション
金利の高い預金口座に現金を貯めておき、下落相場時に緊急時用の資金として活用する。生活費のために資産を売却する必要がなくなる。必要な現金をすべてそのまま用意しようとすると多額となってしまうため、毎年の配当も考慮して現金クッションを考える。
\[現金クッション = \left( 年間支出 - 年間利回り \right) \times 年数\]利回りシールド
一時的にポートフォリオの資産の中心を高利回り資産に置き換える。長期的には低コストのインデックスファンドを中心に構成するべきで、この条件から離れすぎると4%ルール自体が破綻してしまう。
- 優先株(株式と債券をかけ合わせたような金融資産)
- 不動産投資信託 REIT(毎月家賃を集め、利益を投資主に還元)
- 社債(企業が発行した債権)
- 高配当株(配当の高い普通株)
地理的アービトラージ
通貨の強い国でお金を稼ぎ、通貨の弱い国でそのお金を使う生活。これにより生活費は抑えられ、経済的自立もより早く達成できる。また、リスクからの防衛手段としても活用できる。
ポートフォリオ
インデックスファンドと債券に投資する。投資の割合は、現代ポートフォリオ理論に則って決定する。ポートフォリオ決定時には、ホームカントリーバイアス(投資家が自国市場をオーバーウェイトする傾向のこと)に注意する。
インデックスファンド
インデックスファンドのメリット
- 成績が良い(85%のアクティブ投信をアウトパフォームする)
- 銘柄選定の手間が不要(時価総額に準じて保有銘柄の割合が決まる(自浄メカニズム))
- インフレに強い(価値がインフレと足並みをそろえて上昇する)
- 手数料が安い
自浄メカニズム
最も大きくて最も健全な会社だけを保有し、悪い会社の株は価値がゼロになる前にポートフォリオから排除される。
現代ポートフォリオ理論
現代ポートフォリオ理論
資産は期待リターンとボラティリティで表される。
効率的フロンティア
あらゆる資産は期待リターンとボラティリティによって数値化され、それぞれの資産のアロケーションを調整することで、許容できるボラティリティの範囲をコントロールできる。
現代ポートフォリオ理論の注意点
- ポートフォリオに株式と債券の両方を抱えているときのみ有効なアプローチである
- 資産がすべて(個別株ではなく)インデックスファンドである場合に最も有効に機能する
リバランシング
ポートフォリオの割合を元の割合に戻すこと。売られすぎや買われ過ぎによってポートフォリオの割合は時間経過とともに変化する。リバランシングによって、売られすぎているものを買い、買われすぎているものを売ることになる。これは株式市場でお金を稼ぐための鉄則に則った行為である。