「幸せをお金で買う」5つの授業
サマリー&レビュー
内容
「幸せになるお金の使い方」の多面的な指南書。「何に」対して、「どのように」お金を使うべきかが全世界の調査・研究結果に基づいて指南されている。特に本書は「お金は時間」と考えるため、「幸せになる時間の使い方」の指南書にもなっている。
何に
- モノよりコト(経験)
- 不快な時間を減らし、楽しい時間を増やす
- 他人のためにお金/時間を使う
どのように
- 好きなコトは頻繁にやらない(ご褒美にする)
- 先に支払って、あとで消費する
- 当たり前と思わず、終わりを意識して大切に消費する
対象者
- お金の使い道に困っている人
- 企業のマーケテディング担当者
本書は「お金を使いたい」、または「お金を使って良かった」と人に感じさせる方法が記載されており、マーケティングの指南書ともいえる内容となっている
難易度
- 平易な言葉でつらつらと記載されており、前提知識等なく読み通せる
しかし、全体的にポイントや具体的な指南がわかりづらい文章構成となっている
評価
★★★☆☆(3/5)
- 幸せをお金で買うための重要なエッセンスは散りばめられていたが、全体的にポイントがわかりづらかったように思う
- しかし「幸せの買い方」が書かれた数少ない一冊であり、一読しておくことは勧められる
経験を買う
経験的買い物は、物質的買い物よりも私たちを幸福にし、「自分は価値ある人間だ」という自信を与えてくれる。
経験的買い物と物質的買い物
物質は明確で具体的な利益を提供するが、経験は抽象的な恩恵を与える。時間が経つにつれて、物質的買い物では満足感が減少するのに対して、経験的買い物では満足感が増加する。 買い物の多くは、経験的買い物なのか、物質的買い物なのか、どちらともつかないグレーゾーンに入る。考え方(意識を集中する箇所)を変えることで、物質的な買い物を経験的な買い物と見なせるようになる。
幸福になる4つの経験
これらの経験に「時間的な長さ」は関係しない。
社会的なつながりを生む経験
「他人とのつながりを深める」投資は、人を最も幸福にする。つながりの創造は、ビジネスモデルの重要な要素でもある。
思い出になる経験
レジャーにお金を使った方が人生に対する満足度は高く、物質にお金を使うよりも楽しい話のネタにできる。
自分像(なりたい自分)に近づく経験
経験は人の本質を浮き彫りにする。自分の本質を明らかにする経験は、ブランドものの財布や腕時計よりも多くの幸福をもたらす
めったにない経験
通常のホテルと氷のホテルを比べると、快適なのは通常のホテルで、忘れられない思い出になるのは氷のホテルだろうとほとんどの人は考える。快適さを犠牲にした貴重な経験も存在するが、行き過ぎた犠牲には注意したい。
ご褒美にする
無制限に手に入れられるわけではないこと、いつも一緒にいられるわけではないことに気がつくだけで、その価値をもっと強く意識できるようになる。
手段を目的にする
車は、手段(通勤など)にも、目的(旅行など)にもなりえる。普段なら面倒な車の運転も、ご褒美として豊かな気分を味わう機会になりえる。
低頻度のためにランニングコストをかけない
ここで覚えておくべきことは、「ヨットはけっして持つべきではない。ヨットを持つ友人を持つべきだ(ポルトガルのことわざ)」ということ。ヨットは価格や管理コストが高いわりに利用頻度が少ない。たまに使用する際に呼んでもらった方が利口だ、という教え。
有限を意識する
終りがあると意識することが幸福への鍵になり、簡単に手に入れられる「当たり前」をご褒美に変えてくれる。豊富さは感謝の気持ちを薄れされる。
有限な時間
大学生活が永遠には続かないことを悟ることで、残された学生生活を味わい尽くそうと大切に過ごすようになる。
有効期限の長いクーポンよりも短いクーポンの方がよく利用される。ご褒美が限られた時間内でしか手に入らないときに私たちの幸福は最大になる。
有限なもの
ロンドンの住人の多くはビックベンを一度も訪れたことがない。人はいつも身近にあるものをあまり大切に思わなくなる。
品物を売るために品薄が利用される。希少なものを手にしたときの喜びは大きくなる。
慣れない
どんなに価値のあるものも、何度も繰り返し遭遇すると、最初に感じたインパクトは弱くなっていく。
人はたくさんの国を訪問すればするほど、「自分は世界を旅する者だ」という意識を高めていく。これが今度は、楽しいけれど非凡じゃない観光地の旅行を楽しもうというモチベーションを下げてしまう。
間引く
終わる前に飽きてしまう長いマッサージ1回よりも、30分のマッサージ3回のほうが大きな幸福(3回分のご褒美)をもたらしてくれる。
CMがテレビを見るという経験をより良いものにしている。中断は楽しみの黒板をきれいに拭いてくれ、新鮮さを取り戻してくれる。
賢明なマッサージ・セラピストは、マッサージ中に休みを入れることによって客の楽しみを最大にする。
初心に返る
まったく知らない相手であるかのように恋人と接すると、多くの喜びを感じることができる。恋愛関係が人間の幸福の最も重要な要素であることを考えると、パートナーと過ごす時間をご褒美に変えるために使ったお金は、上手に使えたお金といえる。
時間を買う
お金よりも時間に重点を置くと、人々は幸福と人間関係を優先させるようになる。豊かさを求め過ぎると、自由な時間が奪われていく。
増やすべき時間と減らすべき時間
増やすべき時間
- 友人や家族と過ごす時間
- ボランティア活動の時間
- 集中する時間
- レジャー/運動の時間
集中する時間
やっていることが快適であろうと不快であろうと、集中しているときが一番幸せ。
減らすべき時間
- 不快な時間
- テレビ時間
- 通勤時間
不快な時間
「Uインデックス」とは、人々が不快な気分で過ごす時間の量のこと。Uインデックスを改善することで人の幸福度は増す。
「時間と幸せ」・「時間とお金」
時間と幸せ
「1日の時間は十分ではない」と感じている人は、人生にあまり満足していない傾向がある。何か貴重なものは、通常不足しているように感じられるもの。時間に高額な価値があると感じると、人々はますます不足していると思うようになる。時間に追われていると感じると、その瞬間を生きるのが難しくなる。
他人のためにわずかな時間でも費やすと、人々は自分の生活により多くの時間があると感じ、心の余裕が生まれてくる。ボランティア活動に従事すると、人々は自分の生活により多くの自由な時間があると感じる。
時間とお金
「お金は時間」と考えることは人々を幸福にするが、「時間はお金」と考えることは人々を幸福にしない。フランクリンの時間に対する考え方を受け入れると、幸福は損なわれる。時間をお金とみなすようになると、日常生活のお金にならない楽しみから喜びを見いだせなくなる。時間とお金を交換可能なリソースと見なすことは、経済的な観点からは賢明でも、幸福の観点からは有害である。
時間を使ってもっとお金を稼ぐことを考えるのではなく、その時間の中でもっと幸せな気分を感じるためにはどうすればいいのかを考える。
ベンジャミン・フランクリン
時は金なり、ということを忘れてはならない。労働によって1日あたり10シリングを稼ぐ人が、海外へ行くか、あるいはぼんやりして1日を過ごせば、その日の半分は無駄になる。つまり、5シリングが消えてしまうということだ
先に支払って、あとで消費する
お金を先に支払い、消費をあとまわしにすることで、期待に満ちたわくわくした気持ちを持ち続けることができる。また、遠い将来のことを考えられるようになり、自身の幸福のために賢い采配を振るえるようになる。
人は「先入観」に大きな影響を受ける。「ある漫画はとてもおもしろい」と事前に聞くと、人はもっとよく笑うようになる。この特性をより幸福になるために利用する。
「先に消費して、あとで支払う」の罠
「現在の威力」とは、何かよいものがすぐに利用可能な場合に、他のすべてのものが小さく見えてしまう事象のことを指す。現在ほど魅力的な時間はないため、「良いもの(消費)を先に手に入れ、悪いもの(支払い)を先延ばし」にする傾向がある。
クレジットカードは人のこの特性を利用した革新的な技術で、人々に多くのお金を使わせている。幸福度と収入の相関はかなり弱いが、幸福度と請求書の支払いが可能かどうかの間には強い相関がある。
他人に投資する
少額でも他人のためにお金を使うと幸福度は増加する。金額の大きさよりも、お金の使い方のほうがはるかに重要。多くの人がそのことを認識しているが、今日、何かにお金を使ってくださいと言うと、大部分の人は自分のためにそのお金を使った方がもっと幸福になれるだろうと考える。
寄付が義務であっても効果はあるが、自発的であれば満足度はさらに高くなる。自分の慈善的行動の影響が具体的にわかると、寄贈者の満足度はさらに高くなる。
その他のポイント
- お金の写真を見ただけで、友人との夕食よりも料理の個人レッスンを選ぶなど、孤独な活動を好むようになる
- 過ごし方への影響を考える
買い物がどのように自分の時間に影響するかを考えれば、より幸福になる選択に向かってシフトする。比較して買い物をする際には、通常の基準を超えている製品同士の差に注意を向けていることがほとんど。比較して製品を購入する際には、時間の過ごし方への影響を比較する - 何か新しいものを手に入れるために、失われてしまう活動について考えるのは非常に難しい
- 新しくて素敵な家を買っても幸福になれるわけではない
満足度は上がるかもしれないが、生活や人生に関する幸福度はまったく向上しない。家や財政面で良い投資となるかもしれないが、幸福面では優良投資とは言えないことが多い - 必需品には「無駄遣いすることはない」という重要な特徴がある
- 作業イリュージョン
顧客はたとえ待たされていても、その間に自分のために作業が行われているという印象を受けると、待つことによってむしろ満足度が増す